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個人再生で800万円の借金を完済

個人再生をするとどれくらいのメリットがあるか、私が担当した事例を少しかえてご紹介したいと思います。

 

目次

1.800万円の借金の解決方法のご提案
2.個人再生のメリット
3.800万円の借金の減額計算
4.毎月の返済額の計算
5.個人再生の申請、認可

 

<事例>
個人再生の申請をした方:Aさんサラリーマン 45才 大阪府岸和田市在住

家族構成:奥様、子供2人(高校2年、中学3年)の家族4人暮らし

 

-毎月の収入-
Aさん 手取り30万
その他に夏冬それぞれ40万のボーナス
奥様 パート 8万
収入合計 38万(ボーナス除く)

 

-毎月の生活費(4人あわせて)-
住宅ローン 11万
食費 7万
電気、ガス、水道、携帯、インターネット代 5万
保険料 2万
日用品、小遣い、交際費など 5万
教育費 3万
支出合計 33万

 

-保有している財産-
マイホーム、退職金、学資保険の積立て、預貯金

 

-借金の経緯-
Aさんは高校を卒業してから、同じ会社に長年勤務しており、手取りの収入は安定しています。しかし、会社から単身赴任を命じられて、一時一人暮らしをしておりました。その時に家族とは別々に生活していたので、お金遣いも荒くなり、ギャンブルやキャバクラなどの遊興費にお金を使うようになりました。遊興費の資金は小遣いだけでは到底足りず、消費者金融やクレジットなどでお金を借りる事を繰り返してしまい、気づけば借金は800万円ほどの膨れ上がってしまいました。毎月の返済も20万円以上となり、とても完済は難しいと考えて債務整理のご相談に来られたというのが経緯です。

 

1.800万円の借金の解決方法のご提案

 

まずは債務整理の方法としては、任意整理、自己破産、個人再生と3種類ある事を説明させていただきました。

 

しかし、任意整理は交渉ごとなので元金のカットまでは難しく、せいぜい将来の金利のカットのみです。また通常業者は長くても最長5年(60カ月)の分割和解にしか応じてくれません。800万円の借金を60カ月で割っても、毎月14万円近い返済が必要となります。手取り給料から考えると任意整理は難しい旨ご説明させていただきました。

 

また自己破産をすると借金はなくなりますが、財産もなくなってしまいます。Aさんはどうしてもマイホームは子供のために残してあげたいとの事でしたので、個人再生をご提案させていただきました。

 

2.個人再生のメリット

 

個人再生のメリットはなんといっても、借金の元金が大幅にカットされる事です。借金の額にもよりますが、認可により借金の額は原則5分の1となります。

 

またマイホーム等の財産もすべて残せますし、ギャンブル等で作った借金でも利用が可能です。そのため、Aさんには最適な債務整理方法である事をご説明させていただきました。

 

3.800万円の借金の減額計算

 

まずは、個人再生が認可されると借金はどこまで減少されるのかを計算する必要があります。計算式には下記の表を使います。

 

-負債の総額- -最低弁済額-
① 100万円未満 全額
② 100万円以上~500万円未満 100万円
③ 500万円以上~1500万円未満 債務額の5分の1
④ 1500万円以上~3000万円未満 300万円
⑤ 3000万円以上~5000万円以下 債務額の10分の1

 

Aさんの場合、借金の総額が800万円のため、上記表の③にあたります。そのため、個人再生が認可されると800万円÷5=160万円まで借金が減少するのが原則です。

 

しかしたくさん財産のある人に大幅な借金の減額を認めてあげる必要はありません。そのため、減額される借金は保有している財産の総額までしか減らせないという制限があります。

 

借金の5分の1の額 < 保有している財産の総額 の場合、返済額は財産の総額となる。

 

そのため、個人再生の申請前にAさんの財産の総額を計算する必要があります。Aさんにはマイホーム、退職金、学資保険の積立て、預貯金という財産があります。 そして、それぞれの財産をどのように評価していくかが次に問題となります。

 

○マイホーム
まずはマイホームですが、住宅ローンを組んでいる場合、現在の住宅ローンの残債額をマイホームの売却価値からひきます。 Aさんのマイホームの査定は知り合いの不動産屋さんに頼んでみたところ、2,700万円との事でした。 しかし、住宅ローンの残債はそれを上回る3,200万円残っていましたので、結局このマイホームに現時点で資産価値はないという事がわかりました。

 

○退職金
次に退職金の額をAさんの勤務先に頼んで調べてもらいました。そうすると仮に退職した場合、現時点において600万円の退職金が出る事がわかりました。 しかし実際に退職するわけではないので、退職金は財産価値として低く評価されます。 具体的には大阪地裁のルールですと8分の1に評価してくれます。 そのため、退職金については600万円÷8=75万円の財産を保有していると評価されます。

 

○学資保険の積立て
かけすてではなく、貯蓄性の保険に加入していた場合、仮に保険を解約すると解約返戻金が戻ってくる事があります。Aさんの加入している保険会社に現在の解約返戻金を調べてもらったところ、65万円との回答を得ました。

 

○預貯金

またAさんは預貯金として30万円あります。もっとも99万円までの普通預金は0円として評価してくれます。生活費として貯金は使うので、99万円までならば資産性がないという判断です。しかし上記はあくまで大阪地裁(支部も含む)のルールです。個人再生を申請する県によって取り扱いが異なるので事前に調べておく必要があります。

 

これらの財産をすべて足すと下記の通りです。

 

マイホーム(0円)+退職金(75万円)+学資保険(65万円)+預貯金(0円)=140万円

 

そのため、借金の額(800万円)の5分の1である160万円より財産の額の方が少ないので、原則通り、個人再生の認可により借金は160万円まで圧縮される事がわかりました。

 

4.毎月の返済額の計算

 

さて、個人再生が認可されると160万円に圧縮された借金を返済していくわけですが、これは3年で返済するというルールがあります。どうしても3年での返済が難しい場合は5年まで伸ばせる場合がありますが、原則は3年での返済が必要です。

 

そのため、160万円を3年の36カ月でわり、毎月の返済は45,000円ほどになります。ただし実際は個人再生開始決定までの遅延損害金がつくので、少し余裕をみて、毎月5万円ほどの返済になる旨説明させていただきました。

 

5.個人再生の申請、認可

 

個人再生の申請の際には2カ月分の家計簿を提出する必要があります。Aさんが相談に来られたのは3月でしたので、4月、5月と家計簿をつけて、6月に個人再生の申請をすることになりました。

 

申請すると4カ月ほど裁判所で審査があります。その間は毎月家計簿を裁判所に提出する必要があります。また毎月ちゃんと5万円のお金が余って、ちゃんと3年間返済できるかが、裁判所でテストされます。

 

Aさんは最初にご相談にこられたときにお聞きした家計の内訳によると収入38万円に対して33万円の支出でした。また臨時的な支出に備えて年に2回のボーナスもあります。そして裁判所での審査中も借金の原因となったギャンブル等はやめて、節約に励んでくれました。無事毎月5万円以上のお金があまり、返済に問題がないと判断されて、4カ月後に800万円の借金を160万円に減額する認可決定がでました。個人再生が成功するかは、やはり収入が安定していること、無駄な出費をやめてきっちり返済できるという事を裁判所にアピールできるかです。

 

過去に浪費をしていたのが借金の原因だったとしてもそれはあくまで過去の事です。改心してきっちり家計を改善できれば個人再生は認可されますので、ご安心いただければと思います。

2022.02.07
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